クリス・モリス、アンソニー・ルーベン、BBCリアリティ・チェック(ファクト・チェック)

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自分の国は新型コロナウイルスにうまく対処しているのか、誰もが知りたがっている。ただ、他国と比較するときは、同じこと同士を比べているのか気をつける必要がある。

例えばアメリカは、COVID-19(新型ウイルスの感染症)の死者がどの国よりもはるかに多い。4月23日現在、4万6000人以上が亡くなっている(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計)。

しかし、アメリカの人口は約3億3000万人だ。

これは、西ヨーロッパの5大国(イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の合計人口(約3億2000万人)とほぼ等しい。

これら5カ国の新型ウイルスの死者を足し合わせると、4月23日現在で9万1000人を超える(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計)。アメリカの2倍に近いのだ。

個々の統計は全体像を示してはいない。

英エジンバラ大学のロウランド・カオ教授(データ科学)は、比較を有益なものにするには、2つの問題を考える必要があるとする。

「基本となるデータは同じ種類なのか? 疫学(伝染病の広がりに関する他の全要素)が違うとき、2つの数字を比べることに意味はあるのか?」

死者の集計

まず数字をいくつか見てみよう。COVID-19の死者の記録方法は、国によって違う。

例えばフランスは、毎日発表する人数に介護施設で亡くなった人を含めている。一方、イングランドは4月末まで、病院で死去した人数だけを発表していた(4月29日から、介護施設や自宅などでの死者数も含めるようになった)。

死や死因をどう判定するのかについても、一致した国際基準がない。

統計に反映するには、ウイルス検査を受けている必要はあるのか、それとも感染の疑いがあると医師が診断すれば十分なのか? 

ドイツでは介護施設の死者については、ウイルス陽性と判定された場合に限り、数に含めている。一方ベルギーでは、疑いありと医師が診断した死者は全て、新型ウイルス関連死に含めている。

では、新型ウイルスが主な死因でなくてはならないのか、または死亡診断書に何らかの記載があればいいのか?

各国の被害状況を比較するとき、本当に同じ数字を比べているのだろうか?

致死

死者の割合に大きな注目が集まっている。だが、これについても様々な数え方がある。

1つは、感染が確認された件数に対する死者の割合だ。ウイルス検査で陽性と判定される人のうち、何人が死ぬのか? つまり致死率だ。

しかしそもそも、検査の対象が国によって大きく違う。イギリスは、病院に入院するほどの症状が出ている人を主に検査している。そのため、より広範に検査を実施している国より、致死率はずっと高くなり得る。

たくさん検査をすればするほど、陽性でも軽症な人や、症状のまったくない人の数が増える。

感染者における致死率は、人口全体を分母にする死亡率とは別物だ。

死亡率は、国の人口に対して何人が死亡したかを計算する。たとえば、人口100万人あたりの死者数などだ。

この死亡率は、その国が流行のどの段階にあるかによって変わる。ある国で最初の感染者が出た時点が、世界的流行の初期だった場合、死者数は急増ではなく徐々に増えていったことになる。

この時系列の違いを埋める方法として、イギリス政府は各国について、50人目の死者が出た時点以降の状況を比較している。しかし、このやり方にも問題はある。

死者が50人に達するまでに時間の余裕があった国は、新型ウイルスに備え、その後の死者数を減らすための準備期間が長くあったはずだ。

こうした比較について検討するにあたっては、感染者の大多数が回復することも念頭に置くべきだ。

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政治的要因

統制力の高い政治体制の国が発表するデータは、信頼するのがなかなか難しい。

中国やイランなどが発表する死者数は正確なのだろうか? はっきりしたことは言えない。

人口100万人あたりで計算すると、中国の死者数は極端に少ない。武漢市の死者数が一気に50%上方修正された後でさえ、極端に少ない。

そうなると、データは本当に信頼できるのだろうか?

人口要因

人口は国によって現実的に違う。平均年齢や居住地などの人口動態は特に重要だ。

イギリスとアイルランドはよく比較されるものの、これには問題が多い。アイルランドの人口密度はずっと小さく、農村地帯に住む人の割合がはるかに高い。

これら2つの国全体を比べるより、アイルランドの首都ダブリンとその周辺地域を、同じくらいの規模のイギリスの都市とその周辺地域(例えばリヴァプールとマージーサイド)を比較するほうが、よっぽど妥当だ。

年齢構成の点でも同種のものを比べているか、注意する必要がある。

欧州とアフリカの国々の死亡率を比べても、必ずしもうまくはいかない。アフリカ諸国は若者の人口比率がずっと高いからだ。

COVID-19では若者より高齢者が、はるかに亡くなりやすいことがわかっている。

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医療制度の違い

一方、欧州諸国の多くが、アフリカ諸国よりも充実した医療制度を有している。

このことは、新型ウイルスが特定の国に与える打撃の程度に影響する。また、社会的距離を保つことが、その国の文化風習的にどれほど簡単なことなのかも、同様に影響を及ぼす。

世界的流行(パンデミック)を抑える上で、医療制度は当然ながら大きな役割を果たす。しかし、すべての国の制度が同じわけではない。

「その国の人は積極的に治療を求めるか、病院まで簡単に移動できるのか、優れた治療は有償なのか。こうした要素はいずれも、場所によって異なる」と、英サザンプトン大学のアンディ・テイテム教授は言う。

別の大きな要因が、併存疾患(糖尿病や心臓病、高血圧などの病気の数)だ。ウイルスに感染したとき、こうした疾患をすでに抱えている人もいる。

検査

パンデミックの早い時期に多くの検査をし、感染者すべてについて接触した人を追跡した国々は、これまで感染症の広がりをうまく遅らせてきたように見受けられる。

ドイツと韓国は、特に影響が深刻な国々と比べて、死者がかなり少ない。

検査件数の人口比は、死亡率の低さを予測する上で役立つ統計かもしれない。

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とはいえ、すべての検査データが同じではない。検査を受けた人数を集計する国がある一方、実施した検査の件数を記録する国もある(多くの人は正確な結果を得るために2回以上検査を受ける必要がある)。

検査のタイミングや、検査の大部分が病院で実施されたのか、地域でなされたのかも、考慮されなければならない。

ドイツと韓国は非常に早い時期に積極的に検査を進めた。そして、新型ウイルスがどのように感染拡大したのかについて多くの情報を得た。

ただ、イタリアも多くの検査をしてきたが、死者は比較的多い。イタリアが検査件数を大きく増やしたのは、パンデミックが起きてからだった。

比較は困難

では、数字の比較から、役立つ情報は得られるのだろうか?

「国によってなぜ状況が異なり、打撃が比較的軽い国があるのはなぜか。そこから何が学べるのか。それが知りたいことだ」と、英オックスフォード大学のジェイソン・オーク教授は話す。

「これまでのところ、検査がもっともわかりやすい手本と思われる」

だが、どの国が新型ウイルスにうまく対処したかは、この大流行が終わるまではっきりはわからない。

「その時こそ次の流行に向けて、本当に学ぶことができる」とオーク教授は言う。

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(英語記事 Can you compare different countries?)